令和6年度(第74回)税理士試験消費税法の講評

結局のところ本試験の問題を解くのが一番勉強になる、ということで問題を解いてみた感想文です。今回は消費税法編です。相続税法と法人税法も後で書きます。やっぱり本試験は難しいです。勉強にはなるのですが。解かれた方、改めて本当にお疲れ様でした!本試験問題のリンクは↓ここから。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/74/touanyoushi.htm

理論
問1(難易度:妥当)
今年から追加されたインボイスの理論がメインでした。(1)と(2)について問われている内容もそこまで複雑ではないと思いますので、勉強された方は書きやすい理論なのではないかと想像します。一方で(3)は理論として学習している予備校とそうではない予備校があるようです。
※実際に解答速報のボーダーラインを比較するとTACでは20/35、大原では29/35となっています。
自分が覚えていない理論から出てしまうとそこで点数をもらうことはかなり難しいです。時間をかけずに次の問題でカバーするようにするしかないですね…
問2(難易度:やや簡単)
正誤を判断させる事例問題が3問でした。結論をいずれも合わせておけば、ひとまずは安心、ではないでしょうか。ただし(1)から(3)のいずれも「どの理論/理由をもとに結論を導き出せようとしているのか」が意図として伝わりづらく、回答アプローチが受験生ごとに異なると思います。
3問すべて結論を合わせることができた方も多いと感じますが、各予備校の模範解答のようなきれいな理由をかける方は多くないと考えます。あまり問2で差はつかないでしょうね。
計算
問1(難易度:妥当)
また特定新規設立法人がらみの問題出してるよ…というのが正直な感想です。あとはブランド品の買取、販売業者というかかわったことのある方とそうでない方でイメージの差が激しくなりそうな問題だとも感じます。
個人的に難しいと感じた部分は
・2割特例の判定
→これは無理でしょう、その前の超長い前提条件も相まってそもそも読む気が失せる
・イ「商品売上高」の区分
→ブランド品や金券、割賦売上高など馴染みのない取引をいきなり出されるとしんどい
・ホ「他勘定振替高」の処理
→個人的に受験生時代に何度も間違えてしまったため苦手な論点
・カ(イ)ブランド品真贋鑑定の研修費
→金券の真贋鑑定するのか?と考え込んでしまいました
考え込ませるような論点は特定新規設立法人が絡んだ2割特例の判定のみであり、他の取引は一つ一つ落ち着いて処理すれば何とかなりそうな印象を受けます。
しかし、もし私が本試験の環境下でこの問題を解いていたら2割特例の判定で面食らってガタガタになってしまうと思います。難しい論点に時間をかけすぎず、落ち着いて一つ一つ処理できれば高得点も狙えるかもしれませんが、制限時間を考えると難しいです。
問2(難易度:難)
不動産貸付業やめてくれ、食品一本で事業をしてください…と懇願したくなるような問題。しかも「○○円が××費に含まれている」という記載が非常に多いため、ページを何度もめくって確認する手間のかかる、いや~な問題でした。全体的に意図が伝わりづらく、解いていてしんどさを感じる部分が多く、今年の消費税法の大問の中では一番不親切だと思います。
個人的に難しいと感じた部分は
・不動産所得のマンション管理組合に対する仕入額
→たまに模試などで出てきていた気がする論点。勢いで課税仕入れの処理しがち。
・タ「地代家賃」の処理について
→Yから賃借している店舗の家賃1,584,000円で突然店舗40%、作業所60%という謎の「作業所」というワードが出てきて混乱。
しかもYって誰?と思ったらこの問2の主人公Xの父親(同一生計親族)とあるため、果たして免税事業者として処理すべきなのか、適格請求書発行事業者として処理するべきなのか迷いました。TACも大原も相手が適格請求書発行事業者前提で処理している1のですが、こんな意味深な出し方をすると深読みして80%控除で処理する方もいるんじゃないでしょうか?
だって同一生計親族だし、常識で考えたら個人事業主として事業をやっていて適格請求書発行事業者として申告しているとは思えない…どうなんでしょうか、どなたか教えてくれたら嬉しいです。何か見落としてる可能性が大。
・ツ「雑費」
→新聞が月2回発行のため、標準税率というのがやらしい。また、残額で使用する数字が362,001円という謎の端数が発生しているのもやらしい。
・その他の製造経費の電力料、水道光熱費、修繕費
→付記時効に記載がなく、製造原価の資料の数字を拾わなければいけないパターン。これをヘトヘトになっているであろう問2の最後の方に持ってくるのがやらしい。これは自分だったら拾えない…
・全額控除、2割特例との有利不利判定
→そんなことあるのかよ、という感想
全体(難易度:やや難)
理論を40-45分、計算を残りの75分弱でやるのが通常でしょうか。明らかに時間が足りないですね。またインボイスの論点が新たに追加されたことで、ますます試験内容が難化していると感じました。
あくまでも個人的な意見ですが、ややインボイスに偏りすぎていると思います。理論でもインボイス、計算の問1でもインボイス、問2でもインボイスは盛りすぎでしょ。
数えてみたところ計算で処理する論点が問1と問2を合わせて100ほどありました。他にも2割特例の判定や問題文を読むことを考慮すると、各論点の判定~答案用紙への転記にかけられる時間は長くて50分(3,000秒)だと思います。
そうすると、1つの論点にかけることができる時間は平均で30秒です。この30秒で「問題文を読む→判断する→答案用紙へ転記する」という作業をこなさなければいけないので、どれだけ時間がないことか。
HPに公開されている解答速報のボーダーラインについてはTAC65点、大原69点となっています。解いてみた感想では、65点は欲しいという印象を受けました。60点代の後半あれば11月末を楽しみに待っていてもよいのかな、と。
ただ、計算が初めてのタイプの問題(判定含め)なので荒れる予感はあります。2割特例の判定、全額控除といい本試験でああいう判断に迷うタイプの問題を出すのはいかがなものでしょうね?2
普段の答練では理論で点数を稼ぐタイプの方は問1の(3)の媒介者交付特例の問題を取れたかどうかがポイントだと思います。理論ではあの問題で差をつけない限り、他でアドバンテージをとることは難しい印象を受けます。問2なんて何が正解として評価されるのかよくわからない。
普段の答練では計算で点数を稼ぐタイプの方は問1の各論点の判定でどれだけケアレスミスを少なくすることができているかがポイントだと感じます。問2は配点も20点と少なく、ミスを誘発しやすい作りになっているので、あまり差はつかないと思います。一方で問1は特定新規設立法人の論点さえ除けば、普段通りの力を出せることができれば一つ一つはそこまで難しくないと思います(もちろん本試験で「普段通り」やるというのはとても大変なことなのですが)。
昨年令和5年度の試験が比較的ストレートな問題であったのに対し、今年はかなり捻ってきたという印象を受けました。来年はどうなるんでしょう。

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